メビウス9/9

長寿を記念する重陽節句に放送されたメビウス。先週レッサーボガールが斃されて怪獣出現の理由が無くなった今回は宇宙人の話、そして来週からは映画と連動してヤプール編、しかもいきなり一角超獣バキシム!という燃える展開になっております。(そのあとはミサイル超獣ベロクロン、蛾超獣ドラゴリーが3週連続で続くそうです!)

今週は脚本が太田愛さん、さすがに彼女らしいファンタジックなストーリーを、監督のアベユーイチさんが幻想的な映像に仕上げた良作になったと思います。草原いっぱいに散らばる紙飛行機が、少女時代のマリナの悲しみを象徴する。あのシーンが白眉でしたね。
息を引き取ろうとするトーリの背景として、メビウスが怪獣クロノームを倒している。ああいう、ヒーローよりもキャラクターを重視している描写も時には面白いものです。

タイムスリップものは、同じ人物が時を超えて出会うと次元が消滅するだのどうの、だったり、タイムパラドックスに走ったりしがちですが、太田さんはあくまでファンタジックに仕上げてくれました。
そんな中でも上記の「ボガールがいないから怪獣は出現しない」という設定を補佐官にしゃべらせてみたり、マリナの聴覚という特徴をストーリーに生かしたりしているシリーズ構成は見事。ストーリーに無理なく織り込ませています。
更には「強い女」(これは多分に、可愛い系の女の子であるコノミちゃんと対比の上で)であるマリナのキャラクターを否定することなく、「こんなときは悲しんでいいんだよ」とトーリに語らせて涙を見せる演出は女性脚本家ならではかなと感じました。*1しかも「弟」を登場させて「マリナは昔から強かった」と強調させた上での涙ですから、なおさら効果的。マリナは強い女のまま、魅力的に仕上がりました。ゲストの大滝さんのちょっと大仰な演技wに比べて、マリナの演技は時に可愛くときにりりしく、とても魅力的でした。

たった30分だけど、映画を一本見終わったような充実感が有りました。

さて怪獣デザインですが、クロノームが面白い。予告編で見たときはウルトラQの貝モチーフの怪獣「ゴーガ」を想起したのですが、よく見てみると殻がないんですね。
つまりウミウシあたりがモデルなんでしょうか。黄色と水色を主とした独特の配色もウミウシぽい。(背中の造形はウルトラマンティガのファルドンを思わせますが、あれは二枚貝モチーフでした。)
全てがナイトシーンであったため、暗めのライティングもクロノームの神秘的なイメージを浮き立たせました。起動する目はウミユリモチーフでしょうか。まさかウルトラマンレオのドギューではないだろうしw
時空間に存在している間の顔だけのカットも印象的で、目が動くギミックは最高に機能したと思います。
ただ残念なのは脚。ウミウシ(か、貝)のモチーフそのままに、人間の足が露出しない形態をしているのに、移動シーンで足元をアップにしてしまったのは大失敗。「着ぐるみの中に人間の足がある」ことが容易にわかってしまう、左右交互にでこぼこ動く動きを詳細に視聴者に見せちゃダメですよ。

それからトーリ(アンヘル星人)の正体は、「白い孔雀」だったわけですが、ウルトラマンマックスで同じく太田愛さんが脚本を書いたユニジンによく似ています。これはやはり太田さんの趣味と見るべきかな?

*1:逆にベムスター戦では、意外にもマリナが恐怖のあまり涙するシーンが有り、「強くても女の子だから」という男性脚本家の見方の象徴例だと思います。