燃えろレオ燃えろよ

メビウス第34話「故郷のない男」の感想です。
この感動作、どこから書き始めればいいんだろう。
まずは作り手の心遣いに対する感動から書きましょうか。

ウルトラマンレオ」は昭和49年から50年にかけて放映され、それまでの全てのウルトラマンと異なり、初めてM78星雲・光の国以外の出身であるウルトラマンでした。
しかも故郷・L77星はマグマ星人により滅ぼされており、そのマグマ星人がレオの移住の地・地球まで襲ったことから始まったストーリーでした。
彼は変身能力を失ったウルトラセブンモロボシ・ダンの指導を受け、ウルトラマンとして成長していきます。そう、名乗りこそ最初から「ウルトラマン」でありながら、彼は「ウルトラマンになっていく」ヒーローだったのです。

僕たちと同じように、ウルトラマンになろうとしていた男。

そしてウルトラマンとして一定の評価を得、特訓のシーンが描かれなくなり、遂にはウルトラマンキングにより「ウルトラ兄弟」の称号を得た後、なんと防衛チームMACが全滅し、恩師モロボシ・ダンも生死不明(この世界観では、映画「ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟」で初めて安否がはっきりしたことになっています)、再び訪れた孤独な苦境を、ウルトラの兄達に頼らず(一度だけ弟アストラの救援は得ましたが)円盤生物を迎撃し、力尽きて絶命してしまうのです。

ウルトラマンキングの「お前を必要とする人がいる限り、お前は死ねない」という言葉とともに起こされた奇跡によって、レオは「ウルトラマンとして」蘇ったと言われます。その証拠に、そのあと、彼のカラータイマーの音が初代マンと同じ音に変化したのでした。

その翌週の最終回で、レオは円盤生物とブラック指令を倒し、唯一の故郷となった「地球」を目に焼き付けるため、ウルトラマンとしてではなくおおとりゲンとして旅に出ます。


そのレオの、「唯一の故郷」地球に対する想いが、高らかに語られたのがこの「故郷のない男」でした。本当の故郷L77星は「美しいあの星は 二度とは見えぬ 暗い彼方へと 消えていった」(「ウルトラマンレオ」挿入歌・「星空のバラード」)ため、レオの地球に対する思い入れはメビウスや、当たり前のように地球に住んでいる我々地球人よりも深いのです。

またドラマとしての「レオ」の特色を多く盛り込んでくれたのも嬉しいところ。
オリジナルの「レオ」ではセブンが変身不能だったため、特訓シーンは人間の姿、ダンとゲンで行われていましたが、今回遂に、ウルトラマンの姿でレオがメビウスを鍛えると言うシーンが実現しました。
特訓に使われた道着は白、これは「レオ」初期に使われたもので、後にゲンの道着はブルース・リー同様の黒に変わります。
その道着で編み出された技は、「メビウスきりもみキック」(仮名てか俺が今つけた)。奇しくも、レオがダン隊長の特訓で初めて身につけた技と同じものでした。
もちろん、破壊力を増すために回転を加えると言う、仮面ライダー2号(卍キック)やウォーズマンと同じメビウスのコンセプトと違い、レオの場合は兄弟怪獣が高速回転し津波や稲妻、竜巻を起こす「ギラススピン」に対抗するために回転したのですが、こんな細かいところまで拘っている(僕の考えすぎかもしれませんが)辺りが、オールドファンからすると嬉しいのですよ。

また今回の敵「リフレクト星人」のキャラクター性も「レオ」の星人(あの頃は悪役の場合「宇宙人」ではなく「星人」と言うのが通例になっていました)とよく似ているのです。
レオの第2〜3話に登場したツルク星人が代表ですが、レオの敵である星人はほとんど、「地球を破壊する」とか「地球を侵略する」という確固たる目的意識を持って襲来してはおらず、通り魔のように人を殺したり人間に化けて道場破りしたりする「よく解らない」、いわば「レオと戦うためだけに登場した」敵が多かった。第1話のマグマ星人や終盤のババルウ星人、円盤生物群は実は例外だったりします。
ツルク星人に至っては(ダン隊長の説明を信じれば)格闘の為にわざわざ腕に刃物を仕込んだというのです。

リフレクト星人も、まず目的意識がはっきりしない。いきなりメビウスと戦って、一旦去った後に再登場しても、結局メビウスと戦うことしかしていない。
ここがシリーズ構成の妙であり、実は現在、インペライザーやロベルガーで実証されている通り、何者かによって宇宙に「メビウス抹殺指令」が出ているため、こんな宇宙人が出てきても不思議ではないのです。それを「レオ」エピソードに生かしたのは実にうまい。
また明らかに生身ではなく改造されているリフレクト星人の姿も、ツルクと同じコンセプトを感じるのです。

それからアクション。「レオ」の切れのいいことといったら。
人間型(ウルトラマン)と怪獣の戦いより、人間型同志の格闘の方が迫力が出るため、毎シリーズのようにニセウルトラマンやそれに準ずる悪の巨人が登場しますが、今回はメビウス対レオという夢のカードでそれを実現させました。
(これまでもザムシャー関係とか、人間型対人間型の映像があったことはあったんですけど、やはりウルトラマン同士というのは燃えます!)

メビウスとの格闘はもちろん、卑怯な作戦に出たリフレクト星人に対してメビウスと共闘するレオの動きのかっこいいこと。二家本先生もお喜びでしょう。

30年ぶりのレオキック、メビウスとのウルトラダブルキック、爆発を背負う逆光の二人、
そして30年前そのままの変身バンクシーン。

映像だけを見ても(ストーリーはふっ飛ばしても)楽しめるように出来ていました。

そして台詞。
「その顔は何だ、その目は何だ、その涙は何だ!お前の涙で地球が救えるのか!」
「男はいつも一人で戦うんだ、自分自身と戦うんだ」
「武器に頼れば隙が生じる。最後に頼るのは、自分自身」
ダン隊長の受け売りもあるでしょうが、これ、駆け出し院長やってる僕の心に響きましてね。
システムが確立されていない新規開業の歯科医院で、うまく行かずに凹むことも多いのですが、落ち込んでるとレオが「その顔は何だ!その顔で患者さんが救えるのか!」と怒鳴ってくるし、逃げ出したくなってもキングが「お前は死ねない、お前を必要とする患者さんやスタッフがいる限り、お前は死ねない」(いや死ぬ気はないが・笑)と諭してくるし、

やっぱ僕のような世代の人間は幸せですよ。ウルトラマンが常に人生を見つめてくれていますからね。

それにしても変身後のレオだけでなく変身前のおおとりゲン・真夏竜さんも想像以上にかっこよかったですね。雲水=さすらいの修行僧といういでたちも暗示的だし(「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣使いと少年」における伊吹隊長のオマージュというより、単純に上記の理由と考えたい)、延々と厳しくメビウスに当たりながら、特訓を静かに見守っていたり、いざとなったら昔のままのポーズで変身して助けに来てくれたり、そしてラストシーンの笑顔。
あれは、男惚れしますよ。惜しむらくは、予告にあったダブル変身が本放送では見られなかったこと。でもストーリー的に不必要だったから無いなら無いで全然構いませんけどね。絵的にね、やっぱ見たかったかなと。

レオの声がちょっと渋すぎるかなと思いましたが、最後のレオキックの声の雄たけびは正に「あの時の」ウルトラマンレオでした。

いやぁかっこよかった。


あとはちょっとしたツッコミ。
一人で戦うって言いながら、最後共闘してしまう根拠がちょっとはっきり語られてないな。でもまぁかっこよかったからいいんだけどw

今回、初めてレオ(ゲン)がタロウを「兄さん」と呼びました。タロウはそれまでの兄弟の仲で唯一、「レオ」にゲスト出演していなかったので、本当に史上初のシーンだったと言えます。

それと、一度顔を合わせるとやたら「兄さん」呼ばわりするメビウス
レオもアストラ以外からは初めて「兄」と呼ばれて気分は悪くなかったんでしょうが、
何だか吉本興業の人が先輩を「兄さん」って呼んでるみたいな感じがあってちょっと(笑)